キリムの店*キリムアートアトリエ |
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シルワン・絨毯 |
カイセリ滞在中、田舎でキリムや絨毯を買い集めている人が居ると聞き、絨毯屋の友達に案内して貰いました。 そこは、農村の道端にポツンと建てられた、何処にでもありそうなボロい倉庫でした。 訪れた時、倉庫の中は殆ど空の状態で、忘れ去られたように絨毯が少しだけ残っていて、これもその一つ。 ただ、これを見た時はもう日暮れ近くて、色合いすらよく分かりません。 産地は、そのシルエットからコーカサス地方のものだろうと言う程度。 見ただけで終わるのかと思っていると、友人が言い値で押し切る強引な交渉をまとめてくれたので、ギャンブル同然で買い取りました。 後で明かりがある所で見た時、古いもので良かったと安堵した次第。 後になって思うと、そこに置かれていたのはどれも古いものばかり、素人とはいえ、それなりに見る目のある人だったんでしょう。 その後で立ち寄った、カイセリのコレクターズショップでこれと色柄のよく似たカザックの絨毯を目にして、紹介者の友人共々、「もしかするとこれも・・・。」とにわかに色めき立ちました。 価格が10倍程も違うからです。 当時、例えこれがカザックでなくても、フラグメントとしての販売を考えていたのですが、コロナが発生して状況が変わりました。 如何にコレクション性があろうとも、売れるものは限られてくるので、売れる方法で原価を回収しなくてはなりません。 元の写真をご覧の通り、少し長めのセッヂャーデサイズ、お祈り用ではないかと思います。 パイル表面と奥の色合いが等しく、色褪せしていないので、年代的には80年程度、天然色が見られる最後の年代になります。 元の絨毯は、必要な時だけ敷いて使ったとか、壁に掛けていたのでパイルが残っているのだと思います。 そのような使い方で、強靭なシルワン絨毯がこれだけこなれているという事は、応分の年月が経過している事にもなります。 また、カイセリの田舎町でこれが見つかった事から、アゼルバイジャン方面からトルコに移り住んだ家族が、この絨毯と共にその居住地を転々とした事も分かります。 もし、販売目的でアゼルバイジャンから持ってきたのであれば、その方は絶対に利益が出ない価格で手放す事になるからです。 |
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色彩は天然色ながら、やや淡い色彩が用いられています。 このフィールド色の水色は現物通りに再現するのが難しく、室内で撮影したものでは尚更なので、加工前の全体像から大まかに 色合いを推察して下さい。 フィールド背面の水色は、主役のデザインを引き立てるためのベースとして、やや薄目に染められています。 そのメインには、マフラッシュ、衣装袋でもお馴染みのドラゴン模様があるので、同じ地域の産だと分かります。 この地方に独特の角ばった羊の角模様は、邪気を払い除けようとする威嚇を兼ねたもの、力強いパターンが特徴です。 全体画像で黒く見える部分は、紺色です。 模様の縁取りにも、一切、黒は使われていません。 余談になりますが、このクリーニングには結構、苦労しました。 パイルが残っている分、表面的な汚れに加え、パイルの奥に残っているかもしれない汚れも取り除かなければならないからです。 一般的に行われている、パイルの表面を洗剤の混ざった水で濯いで終わるので、汚れは全く綺麗になっていません。 これをフル洗浄するには、洗浄によって柔らかくなって浮き上がってきた堆積物を「ダストマシーン」で除去し、更にもう一度 洗う必要があります。 しかし、そこまで徹底的に洗うならば破損も覚悟しなければなりません。 先ず、カイセリで一番安いクリーニング店に出しました。 もし、それで綺麗になるなら有難いからです。 しかし、案の定表面が曇ったまま、何処かスッキリしない今一つの状態でした。 おそらくパイルの表面が長年の汚れを吸着してしまっているのでしょう。 そこで今度は、アクサライのプロのクリーニングに依頼して、お湯で洗って汚れを落として貰いました。 これで終わりの筈でしたが、コロナで中断してしまったため、2年後にもう一度洗いに出しました。 今度は洗剤を使って上手に洗ってくれると言う評判の所です。 結果、ダメージは多少広がったかもしれませんが、残っているパイルは元の輝きを取り戻しました。 表面の毛先は艶々し、触れるとスベスベです。 流石に一枚の絨毯のクリーニングにこれ程の金額を支払っていたら利益は吹き飛びますが、綺麗好きな日本のお客様には 自信をもってお勧めできます。 価格は、面積比で算出した上で図柄により微調整してあります。 掲載している物の他に2枚カット済みがありますが、破損が見つかったため、修理するか小さなサイズに仕立て直す予定です。 |
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